朝帰りのキツネ君、おーい!

 2月24日午前七時前、キツネ君が、急いで林の住処に帰る所に出くわしました。

 一番電車が小さな無人駅を出る頃には、山の端が朝焼けで橙色にそまり、お日様も山の上まで上がってくる季節になりました。高校生を一番電車に乗せての帰り道のことです。

 このところの暖かさで黒い土が見えてきていたのに、朝方の雪で一面真っ白の田んぼの中の道に、何かが走り抜ける姿が目に入りました。横にしたソフトボールのバットに細い短い足がついているよう、すごい早さで山の方へ移動していきます。

 車を徐行させてよく見ると、キツネ。スマートなその体としっぽのバランスは一対一。その辺の犬などとは比べものにならないほどの早さで、遙か前方の畦の一本道を、スーッと流れるように移動して行くではありませんか。こんなに明るくなるまでどこで何をしていたのでしょうか?山裾の林の際まで、一気に流れていくと、ハタと止まりました。振り返ってこちらを見ているようです。六七十メートルは離れているでしょうか。こんなに離れているのに、見られていた事に気付いたのでしょう。二三度こちらを振り返っては止まり、また少し走っては止まりをしていましたが、林の中に姿を消しました。

「早くお帰りよ。」

と、思わず言葉が見送りました。

 冬の間は聞こえることのなかった華やいだ小鳥のさえずりが、耳に届きました。2月は、かた雪渡りの季節です。昼夜の寒暖の差で積雪が締まり、どこまでもぬかることなく雪の上を歩けるようになります。そうすると、朝早く子供達はあちこち自由に歩き回れてわくわくしたものです。森や林の夜行性の小動物達も、この季節は何処でも自由に移動していけるので、あちこち意外なところまで足跡を残していきます。生き物たちは、微かな春を確実にその体で受け止め、生きているのですね。

マンマユウコ・メメのダイニングテーブル

wakidasu kotonoha

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